ご挨拶

日本舞踊家になったタカラジェンヌのお話

日本舞踊との出会い

私が日本舞踊を始めたのは3歳のころ。何も解らないまま、母に手を引かれて行ったのが、花柳芳廸先生のお稽古場でした。

それからウン10年、途中何度か途切れかけましたが、ずっと日本舞踊との付き合いが続いています。なぜか長い歳月を重ねてしまいました。

小さな頃から音に合わせて身体を動かすことが大好きだった私は、日本舞踊に夢中になりました。お稽古場に連れていってもらえる日が何よりも楽しみでした。 そのうち舞踊会にも出るようになり、「きれいね、上手ね。」と、誉められることに快感を覚え、何と言っても鬢付け油や、お化粧の匂い、楽屋の空気、 そして舞台で踊るときのぴりっと引き締まった気持ちと、終わった後の開放感、この落差がたまらなく好きでした。
何かをやり遂げたときの満足感を、その頃もう既に知ってしまった!と言った感じです。

宝塚時代

芸事の好きが高じて、その後宝塚音楽学校を経て、宝塚歌劇団へ入団。そこでプロのキビシ~イ洗礼を受けたわけですが、 若さのせいもあってか不思議と辛さは感じませんでした。やはり根っから芸事が好きだったのでしょう。 いろいろな人間関係に悩みながらも、勝負は舞台の上とばかりに、がむしゃらに頑張りました。

そんなわけで、宝塚にいる間、洋の東西を問わずさまざまな芸事を学びました。 声楽(オペラアリア、イタリア歌曲、日本歌曲、シャンソン、カンツオ-ネ)、ピアノ、琴、三味線、日本舞踊(藤間流、地唄舞)、 クラシックバレエ、モダン、ジャズダンス、タップダンス。etc...

花柳廸薫よりご挨拶

原点に戻る

ですが最終的に、私はやっぱり日本舞踊へ戻って来てしまいました。なぜなら、様々な芸事を手掛けた結果気付いた事は、 お国芸に勝る物は無いと言う事だったからです。私たちのしている事はある意味真似事で、本物では無いという事に気がついてしまったのです。
アメリカ人とダンスを競っても、体型が違う、音楽に対するリズム感が違う、元々持っている血が違うのですから無理も有りません。 バレエ然り、歌も然り・・・。

それならば日本人が日本人としてもともと身体の中に持っている物をやるのが自然でしょう。外国人には決して真似の出来ない物です。 宝塚歌劇団を退団後しばらく、私は宝塚にいて一体何が出来るようになったのだろう、何でも出来るのに何にも出来ないというジレンマに悩まされました。
あんなにたくさんの、様々なジャンルの芸事を学んだのに、それも半端じゃなく努力したのに、いざ外の世界に出た時にどの分野に於いてもプロの域には達せていない 現実に直面したのです。

そこでどうせやるなら、生まれて最初に触れた日本の伝統芸能の日本舞踊を一からやり直そうと名取りになり、その後師範の免状を頂きました。 本格的な日本舞踊との取り組みはこの頃から始まったのです。

日本舞踊に対する疑問

何はともあれ、とりあえずプロの舞踊家としての準備は出来た訳ですが、師範の資格を手にしながら、何故か私は、すぐに人を教えたいとは思いませんでした。 何か、今までの自分の経験を生かせる、もっと別の方法は無いものだろうかと、ずっと考えていたのです。

そんな思いを抱きながら稽古を重ねるうちに、だんだんと具体的な問題点が見え始めました。 それは、世間の日本舞踊に対する認知度、理解度の低さ。日本舞踊なんか一度も見たことが無いし、見ても何をしているのか解らない。 解らないから面白くないから、興味がもてないから習う人が減少していく悪循環。
何でこんなことになったの?
これは日本伝統芸能のひとつである日本舞踊というジャンルの存続の危機です!日本舞踊に限らず、どのジャンルの伝統芸能も、多かれ少なかれ、 問題になっていることですが、私は踊りを踊る人なのでそう感じたのです。

そこで私は考えました。今現在、日本舞踊を習っている人、興味のある人は置いといて、日本舞踊に興味の無い人、一度も見たことの無い人に、 一人でも多く見て頂く事から始めようと。

今現在行われている”舞踊会””おさらい会””リサイタル”などの形式では、それは不可能です。第一興味の無い人は、来ないし、来ないと見る事は出来ません。 ですから私は、その形式ではない違うやり方で、日本舞踊というものがこの世に有るということから、まず、”知っていただく”ことにしました。 これなら、今までの経験も生かせるし、一石二鳥です。

これまで、さまざまなイベントや結婚式などで、いきなりイヨ~ポン チントンシャンと始まって、吃驚したお客様も大勢いらっしゃいますでしょうが、 結果は軒並み好評です。立派な舞台の設えとは違って、より身近な見方をしていただけるようです。
初めて見ました、興味をもちました、又見てみたいです。この3点セットの感想をもっていただけることを目標に、私は踊り続けるのです!!

真の国際化を目指して

夢はこれからも、国内、外を問わず一人でも多くの方に、日本文化に接して見ていただける機会をできるだけ多く持つことです。 なぜなら外国に対してアピールしていくのも、自国に対してアピールしていくのも、どちらも大切な国際理解そして交流だと思うからです。 外国に対して、異文化を知っていただくのが、国際交流のファーストステップ。ならば自国の伝統文化を理解してこそ、初めて真の国際交流が出来ると信じているからです。

文化は特別な人のものではありません。生活の中に根ざし、心を育んで、自然な形でその国や人に息づいているものです。
その心を育ててこそ、世界の中の日本人として自立でき、対等に話をすることができるのだと思います。

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